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30年ほど前、新築分譲マンションのモデルルームコーディネートを始めたのがこの業界に入った最初になります。たまたま大手マンションデベロッパーに勤めていた友人が東京赴任から大阪へ帰ってきた際、最近東京ではモデルルームもインテリアデザインをきちんとコーディネートして見せている、同様に大阪でもやってみたい、と相談されたのがきっかけです。それまでは既成の家具を並べてカーテンを飾って・・・というふうでしかなかったモデルルームをトータルにコーディネートし、おしゃれに見せるというのが住宅業界の仕事のスタートでした。それまでも住まいに関するアイデアはたくさんありましたが、商業施設のデザインの仕事が中心でなかなか接点はありませんでした。
そういったわけでモデルルームコーディネートからスタートした訳なんですが、当時の間取りって縦に和室が2間並んでいるようなステレオタイプな間取りがほとんどだったんです。店舗のデザインではお店に合わせて家具を作っていたので、モデルルームでも同様に間取りに合わせて家具をデザインし、オーダーでつくって置いたりしてみました。それでもモデルルームをいくら格好よく見せよう、広く明るく見せようといっても、間取りがステレオタイプではインテリアをいくら凝ってみても限界があったんですね。もっとこんな間取りだったらいいのに・・なんて事業主さんに提案していたら、じゃあ描いてみてよってことで間取りも描き始めたんです。
最初は好き放題描いてみましたが、実際に設計図を書いている方からこれは法的に無理なんて教えてもらううちに、これはきちんと法律を覚えなければいけないと思って、住宅に関する法律全部覚えていったんです。そうするとそういった法的な制約の中で新たなアイデアも生まれてきて、ますます面白くなっていったんです。 |
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住まいってお店じゃないので「使いやすさ」が第一だと考えています。その次に大切なのは「家にいると落ち着ける」ということ。家は住む人が癒される空間じゃなかったら意味がない、ということです。
逆にいえば、そういう空間を特に必要とせず泊まることができればいいだけでお金があるのであれば、旅館やホテルで十分です。でもそんな人は稀でほとんどの人が家を必要としています。
家というのは毎日そこで生活する空間なので、あんまり華美な演出や凝ったデザインにしてしまうと、かえって使いにくいときがあります。モデルルームがきれいだからこんな家にしたいってよく言われますが、家政婦さん毎日雇わないと無理ですよって答えるようにしています。モデルルームは日常の生活用品をかなり省略しています。すべての日用品を置いたら、全く同じインテリアを使ってもモデルルームのようにはなりません。だからそういう話をしてあげないと、お客さんもピンと来ないみたいです。モデルルームっておしゃれ、素敵って思うけど、実際の生活はその何倍もの家財道具、日用品があるわけで、毎日の生活スタイルになると、そんなにおしゃれな空間を維持するのは大変です。またいつもきれいに整然としようと思ったら、毎日掃除して片付けして大変ですよね。お客さん自身が自分の家財道具や日用品の量を把握していないことがほとんどです。だからこそ設計する立場の人間がリアルな生活シーンを思い浮かべ、使いやすさということを第一に考えるべきだと思います。 |
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僕は住まいの設計の世界で問題だと感じているのは、設計者のほとんどが男性であることです。どういうことかというと、家事を実際にしない、やったことが無い人間が住まいの設計をしているんじゃないかということです。だからリアリティがない設計になってしまう。
例えば掃除機を収納する場所です。一般的には奥行を60センチに設定します。例えば僕は奥行サイズにはあまりこだわりません。今は掃除機も進化していますから、掃除機によってはもっとコンパクトな奥行でも収納することができます。そういったことよりも僕は収納場所にコンセントを設置するようにしています。今の掃除機はほとんど充電式になっていますから、収納する場所にコンセントがあることの方がずっと便利で使い勝手がいいのではと考えました。掃除機を使おうとするたびに、いちいちリビングに出して充電してから使うのなんて不便だし格好悪いと思ったんです。掃除機だけじゃない、今どきの家電製品って他にも加湿器にしても除湿器にしても充電式のものが多いんですね。収納ひとつとっても広さよりも使い勝手から考えればいろんなアイデアがあっていいと思います。
そういったことは僕自身が子育てや家事を通してリアルに感じたこと、あるいはもっとこうだったらいいのにと思ったことなどからアイデアを得ています。
キッチンにしても対面キッチンの場合、よくキッチンスペースに冷蔵庫や食器棚を置いてあります。それも別に使い勝手は悪くないけど、僕はキッチンのカウンターを伸ばしてその下段に食器棚をつくることを薦めることがあります。手の届く範囲に食器棚がないと不便だとよく言われたりしますが、それは奥さんが全部自分でやろうとするからなんです。旦那さんや子どもさんにお願いしたらいいんです。ちょっとお皿取ってよ、とそこで子どもにお皿を出させる、使ったら洗って自分で片付けをする習慣をつけさせる。奥さんが全部自分でしようとするから食器棚も全部自分の手の届く範囲に置こうとする・・自分で自分の仕事をますます増やしてしまうんです。僕自身が家庭で料理をするからこそ、リアルな家族のシーンとして間取りの使い勝手をお話しすることができるのだと思います。
あるいは小さいお子さんのいるファミリーを想定したマンションのとき、洗面室にもリビング側から入るように入り口をつくる場合があります。廊下側からしか入れない洗面室だったら、いちいち廊下のドアを含め全部のドアを開け放しておかないと、子どもの声も聞こえず様子がわかりにくいんじゃないかと思ったんです。赤ちゃんでもそうです。赤ちゃんってよく夫婦共同作業でお風呂に入れたりしませんか?お父さんお母さんが赤ん坊抱いてお風呂に入って、おいあがるぞって言ったら迎えにいってタオルもって拭いてっていう作業ありますよね。そうすると洗面室はリビング側から入れる方がずっと使い勝手がいいんじゃないかと考えたんです。もちろん、お客さんが来ている時に洗面室の出入りが見えてしまって格好悪いという意見もあります。でも、僕の考えでは洗面室の出入りを見られて恥ずかしいようなお客さんが実際に来ることはあまりないと思うんです。お客さんのほとんどは親しいお友達や親せきじゃないでしょうか。また設計する側から言っても、廊下側から入るようにつくることで廊下自身に一定の長さを与えねばならないなど間取りの制約はかえって増えてしまいます。子育てファミリーにはリビングのそばに洗面室があった方がいいという考え方があってもいいと思います。さらに言えば、子どもの手洗いのしつけにしてもお母さんの目がすぐ届くところにあった方がいいかもしれない。
僕自身が一連の子育てを経験してきたときに感じたことや考えたことが、ものすごく役に立ってアイデアが生まれてきます。
僕は住宅に正解は無いと思っています。人それぞれライフスタイルが違えば「住み方」も人それぞれ違ってあたりまえです。誰にでも受け入れられる無難な住宅と言うのが今までの主流だったかもしれませんが、徐々に変わってきているんじゃないでしょうか。
これからは住宅を売る側が人それぞれのライフスタイルに合わせて住まい方を提案していくことがあってもいいんじゃないでしょうか。そういう中で僕自身も様々な住まい方のアイデアをこれからも提案していきたいですね。 |
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| 〜vol.2へつづく・・ |
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株式会社スペース・キー・プラン
代表取締役社長 水嶋和幸氏プロフィール |
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1983年、デザイン事務所スペース・キー・プランを創業。関西でモデルルームの世界にトータルコーディネートをいち早く取り入れる。
分譲マンションの企画、設計、監修にも多数参画。
ライフスタイルや家族構成はもちろん、暮らしにおける多様な価値観を把握し、それらに応えられる住空間を創造。
株式会社スペース・キー・プランのホームページはこちら。 |
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